傍楽 ~未来をつくる仕事をしよう~

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

フリースクールで性暴力事件がなぜ起きたのか

 隠された声〜フリースクール性暴力事件に参加し、フリースクールで起きた「スタッフによる性暴力事件」に関して議論しました。

この問題は一般にはあまり知られていませんが、フリースクールで性暴力が起きていたことが訴訟によって判明し(2016年)、2019年にフリースクールでの性被害、和解「居場所の安全守って」:朝日新聞デジタルが掲載され、2020年2月に当該団体が東京シューレであることが報じられました。東京シューレは2019年7月の和解にいたるまでこの件について説明せず、和解後も「和解したということ以外は話せない」という姿勢でしたが、2020年2月に被害者への謝罪と再発防止策を表明します。しかしながら公表された内容は「1999~2000年度に主催していた宿泊型フリースクール活動において、関係したスタッフによる性加害があったことが2016年提起の訴訟により明らかになり、2019年7月に和解に至りました」ということのみで、いくつかの疑問が残る内容でした。

 東京シューレは、不登校やフリースクールの理解が乏しい時代から、子どもの人権・学ぶ権利のための運動を始めたことや、フリースクールを公教育の中に位置付け国の制度を動かしたことで有名な団体であり、この報道にショックを受けた関係者も少なくないであろうと思います。私もショックを受けた一人です。
検証しなければ再発は起きてしまうし、透明性の無い業界だという印象を強めてしまうという問題意識から、進行はofficeドーナツトーク代表 田中さんで、講師はソーシャルワーカー 美濃屋さんで議論しました。

 

  1. 事件はなぜ起きたか

    なぜ、このような事件が起きてしまったのでしょうか。

    (1)宿泊型施設という閉ざされた空間において、性被害が起きないような対策はとれていたのでしょうか。

    宿泊型施設というのは余裕の無い子ども・若者が来る場であることに加え、帰ることも出来ない場になるので、様々なリスクを想定する必要があります。同じく宿泊型施設の児童養護施設での性暴力もやっと報道されるようになっ てきました。スタッフも若者が多いと思われますが、性の問題をスタッフ間で話し合う場はあったのでしょうか。

    (2)支援者の権威性
    支援者と被支援者(利用者)との距離の問題。詳細は後述します。

  2. 当事者の声の隠蔽 

     今回の事件の問題点は、東京シューレの対応そのものだけでなく、関係する業界が沈黙(黙殺)していることが問題であるという指摘がありました。子ども支援業界・フリースクール業界は、なぜ沈黙(黙殺)したのでしょうか。被害者のことよりも組織防衛に走らせるものは何なのでしょうか。被害者を守るための守秘義務を組織防衛に使っているとの批判もありました。
    被害者のことよりもフリースクール業界内の利害関係を優先させたように感じてしまいます。業界の利益=自団体・自分の利益(指導者への恩なども含め)を守るためだったり、資金源を守るためだったり。

  3. 組織としての責任のとり方 
     本件において代表が責任をとらないのはなぜなのかという意見もありました。また、何故ここへの批判がないのでしょうか。信頼がベースにあるNPO業界において、不祥事があっても責任をとらなくてもいいという前例をつくってしまうのは大きな問題ではないかと考えます。
    大きくしてきた組織を存続させるために、代表が自分自身をアップデートできなくなっているのは東京シューレに限らずNPO業界で起こっているという話がありました。また、代表がカリスマ的な存在になってしまうと、的確な指摘をしてくれる人もいなくなってしまうのではないかという意見がありました。
    こういったことを防ぐためにも、部下が上司に率直な意見を言えるような団体内の文化の醸成や、良い意味でお互いを監視し合う関係性が必要なのだと感じました。
  4. 再発防止のあり方

<権威主義にならないために>
 支援業界は権威主義になりやすいので、業界内で批評し合うことだ大事だという指摘がありました。それは前述の、部下が上司に率直な意見を言えるような団体の文化の醸成や、良い意味でお互いを監視し合う関係性を維持することが一つの再発防止対策になると考えます。

 その中で、支援者と被支援者(当事者)との距離の保ち方についての話が興味深かったです。支援者と被支援者は距離が近くなりやすく、特に宿泊型施設は心身を共にするので、二者の距離がとても近くなるという傾向があるようです。その中で、感情転移(陽性転移/陰性転移)というものが起こることがあるという話を聞きました。私も初めて聞いた言葉なのですが、支援者からサポートを受ける過程で支援者のことを好きになってしまうこと等を陽性転移、逆に攻撃性をもつことを陰性転移というそうです。これが生まれる要因には、被支援者が幼少期に親などに対して持っていた抑圧された感情(愛されたい等)が支援者に向けられることで起きるようです。(逆転移は、支援者が当事者を好きになってしまうこと)

つまり、支援者はこういった関係性の中にいるということを認識し、被支援者に対して権威的にならないよう自ら気をつける必要があるというご指摘には納得しました。

しかしながら、支援者が自分がこういった状況に置かれているということを自ら気づくのは難しく、教育を受けないとなかなか気づけないものだと考えます。周りや先輩が、その近すぎる距離感に気づいてくれることも大事だということです。しかしながら、若者・子ども支援業界は「福祉分野」ではないため、支援者が福祉の勉強をしてきた経験が少ないことも影響しているのではという指摘もありました。
特に虐待を受けていた子に対して、向こうから好意的に近づいてきた時に、拒絶せずに距離を置くのはかなり高度なテクニックが必要だという意見もありました。

また、支援者の中には自らも傷をもっている方も少なくなく、被支援者から感情転移(陽性転移)を向けられたときに「承認」として受け取ってしまうこともあるというお話もありました。

支援者に限らない話だと思いますが、感情転移からはじまる関係は支配関係になりやすく、それがこういった性暴力事件につながる可能性が低くないのであれば、特に、感情転移が起きやすい子ども・若者支援業界内での教育こそが大事なのではないかと感じました。 

 私も以前東京シューレを訪問させていただいたことがありました。子どもの権利や居場所を守る運動をされてきた団体が、このように子どもに対して誠実とは言えない対応をされているのが本当に残念でなりません。次回は5月29日(金)15:00〜17:00、場所未定です。

東京シューレは、裁判以前のそもそもの問題を、きちんと検証し、説明する責務がある。なぜ、こういう事態が起きてしまったのか、そこには、当該裁判で提訴された問題だけではなく、省みなければならない問題があるのではないか。それは、現在にいたるまで、地続きにある問題でもあって、さまざまに考え直さなければならないことがあるのではないか。そして、そのそもそもを東京シューレに関わりのある(あった)人たちがきちんと考え合っていくことが、被害者の方の裁判以前の、そして和解後の「訴え」に応えることにもなるのではないか。また、それをきちんと考え合うことは、ほかのフリースクールなどの関係者が自分たちの場のあり方を考えるうえでも、意味を持つのではないだろうか。(NPO法人フォロ山下耕平事務局長。元東京シューレスタッフ、元不登校新聞の編集長)

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