傍楽 ~未来をつくる仕事をしよう~

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

「復活!劣化する支援 / 劣化するNPO」に参加&次回告知

10月14日(金)、「復活!劣化する支援 / 劣化するNPO」に参加してきました!

講師はofficeドーナツトーク代表の田中俊英さんと大阪府立西成高校の山田勝治校長。

劣化する支援/NPOシリーズの最終回が2019年10月だったので3年ぶりの復活ですね。今回の再開にあたっては、"劣化とは何か"という点について、団体の批評ではなく、過去のイベントで議論した内容からそれぞれのポイントを一般化し、みんなでシェアしていきたいということでした。

なぜ「劣化する支援」が問題なのかというと、支援が劣化していくと、真の当事者の声が潜在化してしまうからなんですよね。田中さんは、潜在化する当事者の5つの要素として、以下を挙げられています。

  1. イデオロギーによる潜在化…リアリズムvs.イデオロギー

    イデオロギーから生まれる組織の問題として、以下の議論がありました。

    思想に取り憑かれると本来の目的を見失う

    "もともとは純粋な思いから生まれた運動であっても、前向きな気持ちで頼りたい思想だったとしても、その思想に取り憑かれてしまうと、本来の目的を見失ってしまうのではないか。自分たちが何をやりたいのかというのを、組織も個人も忘れてはいけない。"(山田校長)

    さらには、組織が大きくなっていくと、地位・お金(利権構造)などを得られるようになり、当初の目的よりも組織を維持することが目的となってしまう傾向があるという指摘が田中さんからありました。

    組織内の民主主義的な議論の封殺

    イデオロギーから生まれる運動体の中にはヒエラルキーが形成される傾向があり、本来は、自由や権利を求めているはずの団体内にもヒエラルキーが形成されてしまうと、組織の中の自由がなくなってきます。代表が圧倒的権力をもっていて、それにノーと言えなくなるなど、組織内の民主主義的な議論を封殺するのが、ひとつの劣化であるという指摘でした。


    上記2つの問題が、当事者を潜在化させている要因になっているのですね。

    イデオロギーに支配されるのではなく、ひとりひとりの当事者を見るというリアリズムに常に注意する必要があるという指摘がありました。 

  2. 潜在化する「当事者」…「サバルタン(当事者)」は語ることができず、誰が代弁・代表するのか

    支援者が語りきれない真の当事者というのは、どんな分野にも存在します。では、支援者はどうすればよいのでしょうか。以下、お二人の対話からです。

    当事者が潜在化する構造

    真の当事者は現在進行形で悩んでいるため、自分の悩みを語る言語をもっていなく、当然人前で流暢に話すことなどできない。だからこそ、当事者なのである。
    サバルタンは語ることができるか」の著者であるG・C・スピヴァクは、真の当事者の苦しみを言語化するには、以下の方法しかないと本書で述べているそうです。


    ①はNPOなどの支援団体、②はご家族など当事者に近い関係者、③は当事者で、一番辛い時期を抜けることができた人でしょうか。

    ③が真の当事者を代弁してくれそうに見えますが、当事者代表が実名顔出しで話すと、その人に質問などが集中し、その人のストーリーが注目されてしまいます。当事者を代表して代弁しているつもりなのに、その語り自体が、現在進行形の当事者(真の当事者)の語りを封じてしまうという構造が常にあると田中さんは指摘されていました。またそれは、①②についても同様で、第三者がイメージできるように、代弁する人が真の当事者に光を当てようとすると、その当事者の色に染まっていってしまうので、結果的に一部の人のストーリーになってしまうということなんですね。

    当事者は潜在化してしまう構造になっていることを認識し、それを伝え続けることが、支援者に必要だということを田中さんは強く訴えていました。

    ゲストのユニークフェイス研究所 代表 石井政之さんも「僕も顔に悩んでいる人たちの話をずっと聞いてきて、知らないうちに僕自身が語りの上手な人になってしまっていて、当事者でなくなっていく自分がある。本当に困っている人たちは、言葉がない、喋ることが出来ない」とおっしゃっていました。石井さんは、これまでの活動の中で言葉の限界を感じているそうです。そして、今後は当事者の方たちと、登山など趣味の時間を一緒に過ごすような時間をつくることも、サバルタンを見つける1つのきっかけになるのではないかと考えているとおっしゃっていました。個人的には、高校内居場所カフェの"つぶやきを拾う"という考えと共通しているところがあると思いました。

    サバルタンの代弁を諦めてしまうことが劣化

    しかしながら、多様な当事者を代弁するための労力はとても大きいもので、そのため、代弁を諦めサバルタンへの想像力を捨ててしまう支援者も少なくないそうです。紋切り型の当事者のストーリーで進めるほうが、当然楽ですし、寄付も集まりやすいですよね。
    ここで、山田校長から、これはイデオロギーの優越性とつながる話だというお話しがありました。イデオロギーが優越していくと、当事者のことをわかった気になり、当事者の問題に対して紋切り型の解決策を当てはめ、これでいいのだという支援者たちの優越性についてでした。イデオロギーが権威をもつと、支援者は紋切り型の当事者像を訴えていく傾向があり、結果、真の当事者が潜在化してしまうのですね。

  3. 「倫理的なビジネス」が劣化を防ぐ…ソーシャルセクターの商業主義を超えて

    ここでは、以下2点についての指摘がありました。

    社会貢献で隠した商業主義

    例えば、ある社会問題に対して支援システムを構築すると、行政からの委託金、企業からの寄付、NPO広報による寄付集め等で注目を浴び、活動が大きくなっていきます。これらのシステムの中には、社会貢献で隠した商業主義があるのではないかという指摘がありました。商業主義自体を否定しているのではなく、建前上は社会貢献としていることで商業主義を隠すというのが劣化であるということですね。これは、SDGsの流れも影響しているかもしれないと思いました。

    委託金の切れ目が支援の切れ目

    行政からの委託金等が切れたタイミングで支援も同時に打ち切るNPOも少なくないそうです。これは支援団体として、非人道的な行為ではないかという指摘がありました。何かしらの工夫をして、減額したとしても、支援を続けることが大事なのではないかと。

    officeドーナツトークが西成高校で運営している"となりカフェ"も、行政からの委託金が途切れた時期が2年間あったそうですが、ドーナツトークと西成高校で知恵を出し合って、クラウドファンディング等を活用した寄付集めや、学校からの資金集めの協力もあり、継続することができたそうです。
    実は、この委託事業から外れた2年間が一番盛り上がっていた時期であり、この2年間が今を作っているのかもしれないと考えるほどだったそうです。大変な時であったが、となりカフェが生まれ変われた時となったという話は印象的でした。

  4. 技術の劣化

    ここでは、リーダーの振る舞いの重要性について議論がありました。         

    リーダーの重要性

    リーダーの振る舞いで、NPOの劣化・支援の劣化は防げるのでしょうか。NPOのリーダーには、サバルタンに光を当てることができるリーダーと、できないリーダーがいます。後者の団体においては、スタッフの中にも、そのようなリーダーに不満を持っている人もいれば、不満をもっていない人もいて、いわゆる、キラキラNPOのスタッフはこの後者に当たるのではないかという意見もありました。

    支援者の中には、サバルタンを見つけることにはあまり興味がない人や、当事者を見るよりも他団体との協業や経営面の方に興味がある支援者たちが、ここ数年増えてきているという感覚があるそうです。NPOにも企業の人が入ってきたり、営利企業も対人支援業界に入ってきているので、この傾向は今後強まる可能性が高いと個人的にも感じていて、ますますサバルタンが増えていくのではないかと思いました。

    では、サバルタンに光を当てることができるリーダーがいる組織であれば、働くスタッフも同様にサバルタンに光を当てられる支援者になっていくのでしょうか。

    当日参加されていた支援者の方は、リーダーの振る舞いで劣化は防げるのではないかという感想を述べられていました。具体的には、現場を知っているリーダー・現場の思いを把握してくれるリーダーがいて、そのリーダーがどういう判断をしているか、どういう導きをしてくれるかが、現場で働くスタッフに影響し、それが支援の質に結びついてくるという見解でした。私もこの方の意見にとても共感しました。
    tanakatosihide.hatenablog.com

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    最後に、真の当事者を見ず紋切り型の当事者像を発信することの影響について。
    支援には、行政などの公共セクターがおこなうものと、NPO(最近だと企業も)などの民間がおこなう支援とがあります。本来、重要なものほど行政の役割のはずですが、最近はその領域に民間も入ってくるようになりました。この二つのセクターは、どうリンクしているのか、全体を俯瞰し、見過ごされている当事者がいないか見る人が必要ですが、実際にはいないのですね。従って、ますますサバルタンが見えなくなってきているのではないかと、山田校長がおっしゃっていました。

    支援の劣化が起こるということは、当事者がきちんと把握されていないという問題が根っこにあります。実際、当事者をなんとなくのイメージで共有する傾向がここ数年あるそうです。愛着障害であればこのパターン、虐待サバイバーであればこのパターン等、パターン化された弱者の形で人々が語っていき、そこに予算が落ちていく。ますます、サバルタンが潜在化していく、、

    tanakatosihide.hatenablog.com

  5. 「ポスト劣化」に向けての提言

    田中さんからの「ポスト劣化」に向けての提言です。


    ①リーダーが「自分の哲学/思想」を持つこと

    ②スタッフがそれに共鳴すること

    サバルタン(潜在化する当事者ex.子ども)に常に光を当てること。と同時に、「サバルタンは語れない」ことの難点について、常時語ること

    ④商業主義を隠さないこと(「倫理的なビジネス」が劣化を防ぐ)

    ⑤ファンを騙さないこと(④の言い換え)

    イデオロギーではなくリアリズムに徹すること

    ⑦法人ミッションと事業コンセプトを貫くこと

    ⑧「技術」を常に磨くこと

    ⑨小さな組織であること(①〜⑧を貫徹させるため)tanakatosihide.hatenablog.com

    来週23日は、『我々は「当事者」を語ることができるか』をテーマに、この続きをやりますので、ぜひご視聴ください!

【読書ノート】洗脳 地獄の12年からの生還  <Toshl (著)>

旅先からの電車の中で読み切ってしまいました。
洗脳とはこういうことなのかというのがリアルにわかる。

ホームオブハート団体代表と幹部である元妻のタッグによるマインドコントロールと心身に対しての暴力による支配が12年も続いていたのですね。そして10億以上の収奪。マインドコントロールがとけたとき、その主犯格の相棒が自分のパートナーだと悟った時の心情は計り知れないものがあるとおもいます。
本書のあとがきは最近メディアで注目されている紀藤弁護士で、以下のような文章がありました。

「洗脳事件は交通事故のようなもの」と私が指摘する根拠もここにあります。つまり、カルトの加害者と被害者が出会っても、そのとき被害者になる人が悩みを抱えていて精神的に不安定な状況でなければ、深入りする危険性はほとんどなかったと言えると思います。


弱った人に善意の顔で近づき利用し、徹底的に搾り取るという行為をしても、主犯の二人は今も逮捕されていなく、団体名を変えて活動をしている。そんなこと、許されるのですね。

紀藤弁護士はToshiさんのメディア報道から当事者から相談が相次いだようで、Toshiさんが団体と決別後協力して活動されているようです。

本書の中でもお二人が触れていましたが、この団体の共同生活の中には子どももいて、ダンボールの中に入れられていたとか、学校には行かせてもらえないとか深刻な児童虐待の環境もあったようで、その子たちがその後どうなっているのか、とても心配に思います。そして、有効な対策も見いだせていない。子どもの権利とは、、と考えてしまいました。

officeドーナツトーク「居場所カフェでのかかわりは何が違うのか」に参加しました。

officeドーナツトーク主催のオンラインイベント「zoom校内居場所カフェ(ロールプレイ含む)16 居場所カフェでのかかわりは何が違うのか」に参加しました。

本イベントの趣旨としては、居場所カフェでのスタッフの動き(生徒との関わり方)のノウハウ部分がまだ教科書化されていないので、officeドーナツトークとしてZOOMを使ってコンテンツ化していきたいとのことでした。

居場所カフェというのは流動的な動きであり、無意識的な組織の動きであり、とても運営がむつかしい。だから現場で働いている人のために、わかりにくいことを言語化していくということを忘れずにいたいと思う。(田中さん)

内容は、田中さんと辻田さんの対話と実践としてロールプレイング(辻田さんが支援者役、田中さんが生徒役)がありました。

www.facebook.com

 

  1. 居場所での生徒との関わり方で気を付けていることはあるか。

    声をかけやすい子にスタッフが群がらないようにバランスをとる。ぽつんとする生徒の気持ちとして、スタッフがみんな一人の生徒のところに行ったら、居場所カフェにいづらくなる子が出る。淡路プラッツ時代に居酒屋プラッツというのをやっていて、入りたいけど入れない子の時間つなぎをしていた経験がある。特に居酒屋プラッツは有料だったから、「私の居場所はなかった」という状況にならないように気をつけていた。

    ほったらかしにしてもいけないし、ずっと話しかけてもいけない。そこがむつかしい。(辻田さん)

  2. 居場所でどうやって生徒に声がけしているのか。

    生徒が見てるものがあれば、「これって何?」と聞いたりする。その子が外につながるツールを示してくれてると思っているから。
    最近はカフェでスマホを見ている子が多い。ただ、スマホで見ているコンテンツを聞くことはしない。それはプライベートなことだから、声をかけるとしたら「そのカバーどこで買ったん?」など、スマホの外側の話をする。(辻田さん)

    スマホはネタにしやすい。LINEも「どんな感じのLINE?」くらいは聞いたりする。僕はスマホをきっかけに恋人の話などを聞くけれど、辻田さんは聞かないのか?カバーの話だけで終わってしまったら、振り返りの時に困らないか?(田中さん)

    困らない。カバーの話をすることで、その生徒の声・表情・トーンなどがわかる。それだけの情報しか得られなかったとネガティブには思わない(辻田さん)

  3. 生徒に聞かなくてはいけない時・伝えなくてはいけない時、そのタイミングは?


    急いで聞くよりも、タイミングを待つことを大切にしている。急いで失敗したことはあるが、待って失敗したことはない。(辻田さん)

    そのタイミングがくる?本当に?待ちすぎると?(田中さん)

    軽いトークからより深い話を聞くために、その生徒と話を続けるかは、生徒が話したいと思うかどうかの反応を伺い判断する。相手の感情をみて、押したりひたり。相手の状態をみて。(辻田さん)

    辻田さんは居場支援からスタートしていて、僕は深い話をする個別支援から入っているので、そこで支援の違いはあるのかもしれない。(田中さん)

  4. 居場所では支援者も役割をおろす

    居場所では高校生にも役割をおろしてほしいから、自分もリーダーという役割をおろしたい。リーダーのタイプもいろいろあり、例えばパノラマのようなカフェマスターという役割もある。自分がカフェマスターをやろうとすると、パノラマのような雰囲気のマスターではなく、ちゃんとしたリーダーになってしまうので、自分はリーダーという役割をおろすようにしている(辻田さん)

  5. 感想

改めて居場所カフェの運営はとても難しく、特に責任者という立場でカフェを運営するということは、居場所を流動体として見ながらも1人の生徒もみていくという、とても経験知の高いお仕事だということを改めて感じました。

これまでも居場所カフェの作り方のイベントや書籍なども発売されていますが、居場所カフェ導入までの学校との協業の流れや必要なコンテンツは何かという視点の共有が中心だったので、今回のようなスタッフ(支援者)の居場所内での動きにフォーカスしたものは、とても貴重であり勉強になりました。

また居場所カフェを運営する支援者の中にも、色々なタイプの支援者がいることは、生徒が心情や状況に応じて支援者を選べる自由があるということでもありますし、素晴らしいことだと思いました。
パノラマの居場所カフェとドーナツトークの居場所カフェの違い、ドーナツトーク内でも田中さんと辻田さんの支援者としてのスタンスの違いも大変興味深かったです。

 

www.akashi.co.jp

npopanorama.stores.jp

 

オンライン ミニシンポジウム 「フェミニズムとDVと共同親権」(4/5)に参加します

4/5(火)に共同親権研究会関西主催のオンライン ミニシンポジウム 「フェミニズムとDVと共同親権」(4/5)に参加します。

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自分の人生を言語化するということ

今日は、officeドーナツトーク田中俊英さんが地元のDaddy(親族が経営)まで来てくださいました。なんだか、いつもより率直な話ができたように思い、とても楽しかったです
 
【印象に残った問い】
  • なぜ、私はどんどん重いテーマ(社会問題)に入りこんでいくのか?
  • 自分の在り方(人とは違う生き方を選択したこと)を、ちゃんと言語化していった方がいいのではないか。(それを人に見せる必要は必ずしもない) 続きを読む

NPOパノラマ 第1回ファンミーティング(11/28)

先週はNPOパノラマの第1回ファンミーティング@よこはま北部ユースプラザでした。

ファンミーティングの趣旨としては、パノラマのファン(正会員・ボランティア)が、なぜパノラマを応援しているのか、パノラマへの期待などをざっくばらんに聞きたいというもので、私は正会員&ボランティアという立場で参加させていただきました。

今回は初めてお会いするボランティアさんも多かったのですが、皆さんと話していて、なぜ私にとってパノラマが必要なのかということを改めて考えるよい機会となりました。

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