傍楽 ~未来をつくる仕事をしよう~

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

「8050問題」今の社会に足りないものと必要な支援~パノラマトークVol.03

パノラマトーク Vol.03 に参加してきました。新型肺炎の影響で参加者は少なかったですが、今年度のまとめを聞けて良かったです。ボリュームがあったので、何回かに分けながらポツポツ書いていきたいと思います。順番は前後しますが、最後のセッション『パノラマが向き合う「8050問題」』の感想から。

多様な人を受け入れる社会に成熟しているか

 このセッションは、社会問題としてクローズアップされている「8050問題」をテーマにした書籍を出版したノンフィクションライターでパノラマ監事の黒川祥子さんによるトークセッション。今の社会に何が足りないのか、どのような支援が求められているのか理事長の石井さんと語るというものでした。
※「8050問題」とは、80代の親が50代のひきこもりの子を抱えている家庭、そしてそこから派生する問題を指す。

 まず冒頭に、黒川さんが取材をしている中でわかったこととして、当事者の共通点に「子どもにとって家庭が安心する場ではなかった」ということがあったというお話がありました。
それは、「教育虐待」「多様な生き方を認めない」「子どもが発達障害を抱えていても認めない」などです。その子の個性や特性を見ようとせず、『いい大学・いい企業』に入る、という1つの道(昭和式成功モデル)しかなかったといいます。そのような中、引きこもりを恥と考える父親や子どもを手放さない母親など、親子のコミュニケーションが状況を悪化させていることがあるということでした。

経済成長期は、親が子ども一人ぐらいは養える経済力があったので表面化しなかった側面がありますが、親が高齢化していることで、昨年のような事件から顕在化するようになったとのことです。

無理矢理家から出して働かせるのは違う。
その前に、私たちの社会が多様さを受け止められているか?
彼らが出ていきたいと思う社会になっているか?
受け入れられない社会に無理矢理出させたら、より厳しくしんどい状況になってしまうのではないか。(黒川さん)

親亡き後に備えるために

 次にMさんが特別ゲストとして登壇。Mさんは元当事者として、親亡き後の問題について石井さんと語りました。

(石井さん)
親亡き後、特に経済面を話し合っておくことが必要だとアドバイスすることがあるけれど、その会話が地雷になることがある。(「そんな話をする前にはたらけ!」など)それが、引きこもりの長期化の要因の一つになっているのではないかと思っている。

(Mさん)
自分は親が死ぬ前に話せたけれど、引きこもり家庭の親子間では話せないものではないかと思う。

(石井さん)
第三者が入らないと難しい。
「どうして、我が家から、生活保護の子どもが出るのか」
「俺の目が黒いうちは障害者手帳をとらせない」
など言われるケースがあり、子どもの立場でそれを説得するのは難しいと思う。
本当は支援者などの第三者による介入支援が必要なのに、支援者は家庭に介入できない。相談支援という場で、目の前の引きこもり当事者の気持ちをガス抜きしているだけで、それ以上のことができない。これから、どういう風にしていけるのか。

(Mさん)
こういった団体もある
◎ひ老会(「ひ」きこもりと「老」いを考える会)

ひきこもり親子の高齢化「8050問題」を、ひきこもり当事者の立場から語り、考える会

www.hikipos.info

(参考)
ちなみに、以下のような親向けのネットワークもあるようです
◎一般社団法人OSDよりそいネットワーク
(「(O)親が(S)死んだら(D)どうしよう」)

www.osdyorisoi.jp

(石井さん)
この前、鍋パーティーをやろうという企画があり、オフィスなどでやるのはつまらないので、ある地域の方のご自宅でやらせてもらったことがある。地域の人も自分の家がこのように使われるのは嬉しいと喜んでくれていて、また次も企画している。こういった場を地域の中に作っていくのも良いのではないか?

(Mさん)
当事者にとっては地元は顔見知りが来る可能性があるので、きつい部分がある。隣の区などにあると嬉しい。会いたくない人がいたら行けないし、過去の傷が戻ってくる可能性がある。 
引きこもりにとっては都会よりも地方が悲惨。地方でよくあるケースが、やっとの思いでハローワークなどの窓口に行っても、昔のいじめっ子が窓口にいたりする。50代になっても、過去の傷が戻ってくることがある。

感想

では、必要な支援は何かと考えたときに、以下の二つがあるかなと考えました。

 一つ目は、パノラマが展開する「有給職業体験プログラムバイターン」のように、地域の理解ある企業(主に中小企業)と働きたい人を専門家がマッチングし支える仕組みです。黒川さんのお話にあったように、無理矢理家から出して働かせるのはもちろん論外ですが、本人が働きたいと思った時に、それを受け入れられる社会(企業)にはまだまだなっていないと思います。そこで絶望を感じてしまったらどうなってしまうのだろうと。中高年の引きこもり問題は、出口支援がはっきりしない中で対策を講じるのが難しいと感じますが、こういった取り組みが一つの出口支援になるのではないかと思います。

 二つ目は、家族全体へのサポートです。Mさんと石井さんの対話からも、親亡き後の話であるとか、これまでこじれ続けてきた親子の関係を回復させるには、当事者だけでは難しいと思います。家庭内の問題の中に第三者が介入する必要(支援)があると感じますが、複雑な家族の問題であるが故にそれができないことが大きな課題に思いました。

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8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語

8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語

  • 作者:黒川 祥子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/11/26
  • メディア: 単行本