【読書ノート】「告知事項あり。」 児玉和俊 (著) (主婦の友社)
2025年1月22日に発売された書籍『告知事項あり。その事故物件で起きること』を読了。著者は事故物件に特化した不動産コンサルティング会社「株式会社カチモード」の代表取締役社長・児玉和俊さん。同社の特徴は、事故物件に一晩滞在し、科学的な調査を行う「オバケ調査」というユニークな手法を開発した点。本書には、著者が実際に経験した不思議で怖いエピソードが17話収録されている。
「オバケ調査」は事故物件の不動産価値を取り戻す試み
事故物件は過去に死亡事故があったことで不動産価値が下がる。著者は、賃貸不動産管理会社での経験を通じ、不動産所有者の立場からこの問題に対する解決策がないことに課題を感じてきたと言う。そこで「株式会社カチモード」を設立し、事故物件の管理者をサポートする仕組みを事業として展開。さらに「オバケ調査」という独自の室内調査を行い、事故物件に対するネガティブなイメージを払拭し、不動産価値を取り戻すことに挑戦している。
オバケ調査とは、具体的には何をするのか。超常現象の有無を検証するために、調査員が不動産物件に派遣され、映像記録、音声録音、電磁波測定、温度・湿度測定などを行うという。興味深いのは、科学の力で説明しようとすると、同時に科学で説明できない事象にぶつかる点だ。本書の中でも、ビデオカメラの記録に残らない音や映らない影などが紹介されている。
事故物件=怖い場所? それを変える「心の距離」の考え方~亡くなった人も、誰かにとっての大切な人
一度事故物件になってしまうと、家賃を大幅に減額して運用する方法しかない。その大きな要因のひとつが「心理的瑕疵」だという。
"心理的瑕疵という言葉があります。これは人の心が感じる気持ち悪さのことです。どこの誰かも知らない人が亡くなった部屋は皆、気持ち悪く感じます。(告知事項あり、p.224)
確かに、素性を知らない人が事故で亡くなった部屋に対して、「なんか嫌だな・・」と思うのは自然な感覚だろう。見ず知らずのオバケになんて怖いだけだで会いたくない。
でも、もしオバケでもいいから会いたいと思う人だったら?例えば家族や親友――夢で会えたら嬉しいと思う人たち。その人たちに会えるのなら、たとえ家賃が高くても住みたいと思うかもしれない。
著者は前者(嫌悪感・恐怖)が「心理的瑕疵」、後者(会えて嬉しい)を「心の距離」と呼ぶ。そうであるならば、事故物件の価値を決めるのは、単なる過去の出来事ではなく、それをどう感じるかという「心の距離」なのだろう。
「事故物件で亡くなった人も、誰かにとっての大切な人なのです。この理解こそが心の距離を近づけるためのポイントであり、心理的瑕疵を軽減する方法なのだと考えています。赤の他人だから気持ちが悪い。しかし、赤の他人であったとしても、亡くなったその人が誰かにとっての大切な人だと知ってもらえたとしたら・・・・・。オバケ調査とは、機械を使ったただの数値調査ではなく、亡くなってしまった誰かの大切なその人のことを知ってもらう。そのための調査でもあるのです。」(告知事項あり、p.226)
※なんと、『告知事項あり。~その事故物件で起きること~』がドラマ化するそうです!
『告知事項あり。~その事故物件で起きること~』
— フジテレビ (@fujitv) 2025年2月27日
岩瀬洋志主演、共演齊藤なぎさでドラマ化!
<前編:3月7日(金) 23時40分~24時10分 後編:3月14日(金) 23時40分~24時10分> https://t.co/pgGWg1pV2o
