本書は、怪奇ユニット都市ボーイズ・呪物コレクターのはやせやすひろ氏による、これまで依頼されてきた不可思議案件の取材内容について書かれている。
はやせ氏への依頼内容は、依頼者がどうしようもなく困り、頼る先がなくなった時に、藁にも縋る思いではやせ氏にDMを送ってきたというケースが中心である。人助けと好奇心が入り混じった気持ち。それは、私も共感する部分がある。
個人的に興味深かったのは、はやせ氏の呪物に対しての思いだ。当初は「いいネタになるかな」くらいのものが、呪物に取り憑かれるように魅せられていったこと。これまで疎まれてきた呪物に対して、呪物が自分で望んだわけではないことや、自身が遭ってきたいじめと重ね、呪物への思いが愛情に変わってきたこと。だからこそ、呪物に対してハッピーエンドで終わらせてあげたいという気持ちが湧き、呪物に愛情を注ぐ呪物コレクターになったという。彼に障りがないのは、そういうある意味ぶっとんだ感性があるからなのだろうだと思った。
また、怖い思いをしている人が、はやせ氏に体験を共有することで、その怖さを手放せるというのも、なるほどと思った。「こんなこと信じてもらえないから、誰にも言えない」と思っている人にとって、信じてくれるだけでなく引き取ってもらえるということは救いでもあるのだなと。
ドキュメンタリー番組をみているようで、面白かった。
私は、ニッチな分野において秘めた情熱を注ぐ人が好きである。
今月のサイン会、楽しみだ。