傍楽 - Kaori's Blog

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

高校内居場所カフェがクローズしていた間に起きていたこと〜高校内居場所カフェサミット2020に参加〜

高校内居場所カフェサミット2020に参加してきました!

カフェサミットは今年で3回目で、私はなんと皆勤賞。パノラマへの愛を感じます(笑)。そういえば、第1回の基調講演は、officeドーナツトーク田中俊英さんでしたね。

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今回の登壇者(カフェ・マスター)は、以下5名。

NPO法人アスリード 武政 祐さん(川崎市立高津高校「SAKURA cafe」)

NPO法人文化学習協同ネットワーク 十時 崇さん (厚木清南高校通信制カフェブランシュ」、津久井高校定時制「出張ぽるとカフェ」、津久井高校全日制「出張ぽるとカフェ全日」)

公益財団法人よこはまユース 尾崎 万里奈さん (横浜市立横浜総合高校「ようこそカフェ」)

NPO法人パノラマ 石井 正宏さん (田奈高校「ぴっかりカフェ」)

NPO法人パノラマ 小川 杏子さん (大和東高校「BORDER CAFE」)

司会は、子どもの未来サポートオフィスの米田佐知子さん。

今年は文化祭等と重なってしまったりして、登壇できるカフェマスターが少なかったのが残念ですが、このコロナ禍に振り返りをすることの重要性は強く感じました。

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パノラマ石井さん(左)と小川さん(右)

 

 3月の一斉休校により高校内居場所カフェが突然クローズしてしまいました。本当に突然。家に居場所が無い子どもたちはどうしているのだろうと、早くセーフティーネットのひとつでもある高校内居場所カフェが再開して欲しいと、みんなが願っていたと思います。

 カフェの再開のタイミングも、それぞれ違います。「SAKURA cafe」のように学校の再開と同時にオープンできたケースもあれば、「ぴっかりカフェ」のように10月までオープンできなかったケースもありました。このあたりの判断は、学校側のカフェへの理解に加え、カフェの特性も影響していると感じました。おしゃべりをしながら飲食をするということと、「ぴっかりカフェ」のように規模が大きかったりすると、どうしても密になりやすいのですよね。でも、生徒がボランティアさんたちと一緒に歌を歌ったりゲームをしたり、密な関係をつくれることが「ぴっかりカフェ」の魅力の1つなんですけどね。

カフェがクローズしていた間に何が起きていたのでしょうか。

在校生との関係が絶たれた

 カフェがクローズしたことにより、支援団体が生徒との関係を絶たれてしまったのは大きかったと感じます。支援団体は、在校生とは連絡先を交換することは禁止とされているため、在学中の学生とは一切連絡がとれず無力感を感じていたということが、共通の問題意識としてあることがわかりました。

特に、3月は進路のことで相談を受けていた時期。その分先生が生徒をフォローできてたかというと、先生も突然の休校で業務に追われ、生徒に手厚くサポートはできなかったのだろうと想像します。3月の休校は、生徒の進路に影響を与えるという指摘もありました。

「学校の中に入れないということは、生徒と繋がるチャンネルを失うということ。私たちは大きな無力感を感じた。オンラインのクラスルームが始まってから、カフェの紹介を入れてもらったり、簡単なアンケートなどをしたりして、周知活動をするようになった。」(パノラマ小川さん)

「在校生と連絡がとれていたら、きっと相談は色々入ってきただろう。長期の休校がある場合には、相談を受けている生徒とは連絡を取れるという協定をしておくべきだった。また支援者側としても、長期間居場所から離れていると、魂が抜けてしまう感じがある。」(パノラマ石井さん)

長期休校になった場合に、支援団体が生徒と繋がり続けることができるための協定や事前準備というのは、その通りだと思います。

卒業生からのSOS

 一方、卒業生からのSOSが入ってくるようになったという話がありました。そして、共通しているのが、その相談内容がヘビーになってきていると。 

 ・生活保護世帯の卒業生。進学のために1年間アルバイトをしてお金を貯めることにしていたが、アルバイトを解雇されてしまった。

・就職後、会社側から解雇され、会社都合であるにも関わらず自己都合で辞めてくれと言われた。その子には「自己都合」の意味が理解できていない状況だった。

・母親とは死別。コロナ禍に父親が失踪。発見された車の中には携帯等が残っていたという状況。

ステップファミリーで、コロナで義理の父親が在宅勤務になり、母親は出勤のため、家に義理の父親と二人でいる状況が辛い。

コロナにより卒業生と繋がるようになったので、"卒業生支援元年"でもあるねという声もありました。

卒業生からこれだけ相談が入ってきているのだから、在校生の中にもSOSを出したかった生徒がどれだけいたのだろうと思います。
「居場所というのをと止めてはいけない」という意見がありましたが、その通りだと。

居場所カフェ再開後の変化

 次に、高校内居場所カフェを再開してからの変化についての議論がありました。

 1つは、学校側(先生)のカフェへの理解。カフェが無くなったことで、改めて居場所としてのカフェの意義、カフェはセーフティーネットの1つであるということを先生が感じてくれるようになったというお話がありました。カフェ再開後に、先生からの相談が殺到したりしているようです。だから、「コロナだから見送ろう」ではなく、「コロナだからやらなきゃいけない」のだと。

 2つ目は、カフェ再開後は、ボッチの生徒が増えているという点。

「高校生活では、いかに集団の中でボッチにならないかというのが、生活していくうえで大事だったりする。クラス替えでボッチになり、体育の授業などに出られなくなり、単位が取れなく中退していく子もいる。

でもカフェがあれば、クラスが変わっても一緒にいられたし、次の仲間を探す場所にもなる。

コロナ後に、ボッチでなかった子がボッチになっている。これは、居場所カフェがなくなったことの1つの影響かもしれない。

 また、こちらがもう一度話そうとしても、長期間会っていないので、生徒との信頼貯金がリセットされてしまっており、以前のような近い距離感で話すことができなくなっている。」(パノラマ石井さん)

 居場所カフェは、友達をつくるのが上手でない生徒が、友達を見つけたり、クラスが変わっても関係を継続させるための場でもあったのですね。また、支援者と生徒との信頼貯金がリセットされてしまうというのは、本当にもったいないことだと思います。丁寧に積み上げてきた信頼関係。築くのは時間もかかり大変なのに、あっという間にリセットされてしまう。居場所を止めるというのは、こういうことなんですね。

改めて高校内居場所カフェの意義を考える

 最後に改めて、個別相談室ではなく居場所カフェがある意義を考えました。

 1つは、生徒が感情のままに自分を出せる場所であること。これは、パノラマの小川さんがおっしゃっていたのですが、例えば、生徒が怒ってカフェに入ってくる。友達や家族のことで少しイラッとしたことを感情のままにしゃべっていく。相談とは少し違う、自分では言語化できない気持ちを感情のままに出せる場が居場所カフェ。そして、ここには、生徒の目線に立って、生徒の利益を第一に考えてくれる大人たちがいる。

ここが、個別相談室との大きな違いなんですね。子どもには、こういう感情を出せる場が特に必要だと感じます。コロナでカフェがクローズし、個別相談室になってしまった時期は、生徒が悩みを大人に相談するハードルが高くなり、こちらから声をかけて初めて来る、という状況だったそうです。

 2つ目は「時間の余白」があること。

カフェでは、ひと手間かけてドリンクをつくるので、その中に時間の余白が生まれ、これが子どもたちにとって大事な時間であるというお話がありました。

例えば、カルピスが濃い、薄い、ストローはどうする?とか、

ラムネひとつでも、ラムネの開け方を知らない子、上手な子、下手な子、ビー玉をどうしても取り出したくなる子。そういうのを教え合うやり取りの中に、いい感じのコミュニケーションが生まれてくる。

 中田正敏先生(田奈高校・元校長)が、人のコミュニケーションは何かしらの媒介があって盛り上がるというお話をされていました。それが、ドリンクだったり、お菓子だったり。それを食べたり飲んだりしながら、リラックスしてきた時に、ぽろぽろ話が出てきたりする。
「それが無くなってしまったこの期間のことを、きちんと聞いて考え抜く時間が必要がある。考えないと消えてしまうから」
このサミットをこの時期にリアルで開催された背景がよくわかりました。

 最後、高校内居場所カフェの立役者であり、子どもの貧困問題を研究されている、日本大学の末富 芳先生のコメントを記載します。

「今後、長期の休校などがおきた場合のことを考え、どうやって子どもを守っていくかということを設計し直していく必要がある。この期間、これまで丁寧に作りあげてきたネットワークや関係性がボキボキと折られてきた。蜘蛛の巣が一瞬にして取り去られるように。こんなことが、全国至るところで起こってきた。自分は最後まで怒り続ける人でいる。

この期間に起きてきたことが何だったのか、これからどうしていくのか、二度と起きないようにするのはどうしたらいいのか。

単純に休校と言われていることの中には、色々な失ってはいけないものが入っていた。今日の話を聞いて、どこも同じように失っていて、同じ思いで前に進もうとしていることがわかった。」

 

動画撮影担当のフジッキーさんもおつかれさまでした〜〜
後日、Youtubeで配信されるようです。

 

会議室を出る時、素敵な富士山に出逢えました。

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こちらは、高校内居場所カフェサミット2020のチラシ

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