傍楽 - Kaori's Blog

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

「アンダークラス化する若者たち」出版報告シンポジウム(1回目)に参加~サポステの来所者の変化について

 先日、「アンダークラス化する若者たち」出版報告シンポジウム シリーズ1回目「若者問題とは何か」に参加しました。

アンダークラス化する若者たち――生活保障をどう立て直すか
 

  本書の中で地域若者サポートステーションの来所者の変化についてコラムを執筆されている"ライフデザイン・ラボ 白水崇真子さんのお話しが勉強になりましたので、簡単にレポートを書きたいと思います。コラムのタイトルは「福祉サービスの器からあふれて、サポステに流入する若者たち」です。

最近の動きとして、地域若者サポートステーション(以下サポステ)の委託先がNPOから企業に切り替わってきていることに懸念を持っているのですが、白水さんのお話しをお聞きして、改めて経験知の低い企業が運営できるものなのか、強く疑問に感じました。

ameblo.jp

note.com

本コラムで紹介されているのは大阪府のサポステで、受託団体は NPO法人HELLOlife。全国のサポステの中でも基礎自治体拠点ではないという点が特徴で、訪問者も多く、面談予約も待ちの状況だということでした。白水さんは8年ほどサポステのご経験をお持ちの中、この1~2年の変化についてコラムを書かれたとのことです。

これまでサポステを訪れる若者は「仕事に就きたいが経験や自信がなく、求人票提供だけでは就活が難しい」というニーズが主だったそうですが、2020年前後から、福祉領域での複合的な困難を抱えた人が、サポステに支援を求めてくるという現象が起きているそうです。

◆サポステ来所者(10代~40代)の特徴

【10代後半】
厚労省より、コロナ禍で就職が難しいので、学校に在籍していても進路未決定であればサポステで支援をという通達があり、学校の先生からのリファーが出てきた。白水さんが担当したのは、高校生で進路未決定者(主に18歳)。

子どもたちの特徴は

  • 生活保護世帯
  • 虐待家庭で育つ
  • 障害(発達障害・知的障害)のグレーゾーン
  • 幼少期からヤングケアラー

自分でHP等からアクセスしてくる子もいれば、養護施設、DVシェルター、学校の先生、生活保護ケースワーカーなどからのリファーがある。既に福祉の窓口には繋がっていたが、福祉分野では就労に関しての支援策がなく経験もないので、サポステに繋いできたというケース。

 

【20代】

  • 障害(発達障害・知的障害)領域でグレーな方たち。
    専門学校や職業訓練校を卒業したけれども、ここでは障害支援の経験が無いため繋げることができない。そのため、卒業後にサポステに来ることになった方たち。
  • 就労移行支援(2年間)後、就職が決まらないままサポステにやってきた方たち。福祉の支援をフルで使ったのだけれど、結果的に就職先が決まらずにサポステにやってくる。その背景には、一般就労と迷っている面もある。就労移行支援の2年間、自分の特性と向き合ったりしたけれど、具体的な就職先の決定ができないまま、福祉から労働の方に帰ってくるという方も非常に多かった。
    本来なら福祉領域の方が安定して働ける人がサポステを訪問するその背景にあるものは、不況で深まる不安や自己責任論のプレッシャーで一般就労に駆り立てられ、福祉の支援にのれないがある。福祉色の無いサポステはハードルが低く利用しやすい。

【40代】

  • 氷河期世代40~49歳と30代までの大きな違いは「病気の保有率」。非正規で仕事を点々としている中で体にかなり無理をかけ、病気になっても休業できなかったのだと推測される。
  • 女性であれば、小さい頃からヤングケアラーで家事を担ってきて、そのまま未婚のまま非正規で仕事を点々としていく中で、心や体を病んでくる人たちが多い。親の高齢化も含め様々な問題が複合化しているが、生活保護というのはあまり彼女たちの中の選択肢には無いようで、なんとか就労しなければならないとやってくるという方が多かった。 
  • 離婚後、夫の収入がない中で、非正規で仕事を点々とし労働力として使い捨てられてきたので正社員になれるようなキャリアを積んできていない方が多かった。
  • 男性については、ハローライフでは大阪府営住宅の空き住宅を使って、仕事と住宅をサポートするという事業がある。(おそらく、こちら↓)

co.hellolife.jp

  • ある49歳男性のエピソード。帝国大学卒業後、氷河期時代に士業の事務所で働くが適用できず、バイトを点々とし、一時路上生活になった。派遣であれば住まいが提供されるということで、20年以上派遣の仕事をするが、コロナ禍で仕事がなくなり貯金が底をつきそうになり、サポステに相談に来た。

◆まとめ

  • サポステは、国の期待もあって幅広い年代に応えてきているが、貧困化の中で課題は複雑化している。労働市場として出口も少なく、コロナを抱え続けたきた結果として、就職支援だけでは難しい方々がたくさん訪れた。
  • 仕事とのマッチングだけでは厳しい。虐待サバイバーの方たちは人に対する不信感であったり、非正規雇用を点々としてきた方は組織や会社に対する不信感も深い中、仕事を続けていくということが難しいことも多いので、信頼・回復ができるコミュニティや職場が必要。その中で働き続けていくという経験をしながらサポートしていくということが必要なのではないか。
  • 定時制高校で支援をしていく中でも、サポステに現れるようなヤングケアラーであったり、虐待サバイバーの子どもたちが、たくさんいる。チーム学校(担任の先生、進路指導の先生、就職支援員、SSW)と専門家と地域のソーシャルワーカーが、社会資源として具体的な場所に繋げていくという活動をしていく中で、早期発見をし、この困難を解決していくことができるのだろうと考える。また、実際卒業後に働かなくてはいけない子たちを、進路未決定のまま卒業させないということも大事なのではないか。

以上、白水さんからのご報告をまとめさせていただきました。

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