傍楽 - Kaori's Blog

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

性について語り合うサードプレイス「ナースカフェ」は人権教育でもあると思った

officeドーナツトークの取り組み「ナースカフェ」の活動を振り返る「ナースカフェ 2022年の振り返り」に参加させていただきました。

講師は、ナースカフェを企画した新山愛子さん。看護師でもありドーナツトークのスタッフさんでもあるんですね。

 

ナースカフェとは

性について語り合うサードプレイス

ナースカフェとは、性について語り合う場。officeドーナツトークが西成高校で運営している高校内居場所カフェ"となりカフェ"の中にあります。サードプレイスの中にあるところがポイントなのですね。

性教育というと堅苦しいので、性をテーマにして、体のことだけではなく心も含めた性のしんどさなど、思春期の性全般を語り合うことで、気づいて欲しいというのが目的なのだそうです。

 

日本の性教育の問題点

性教育というと学校の授業を思い出しますが、みなさん御存知の通り日本の性教育は大分遅れていると言われています。学校での授業も定期的に行われるわけではなく、小学校の修学旅行の前に行われたり、男女別でやったりと、やり方もまちまちのようです。

一方、日本では、インターネットだけでなく本屋など街中で子どもが目につく場所に成人向けコンテンツが出ており、知識が入る前に視覚で見てしまうという状況が問題だという指摘がありました。新山さんは、日本に合った性教育というのを進めたいけたらなと考え、ナースカフェでは学校の授業とは違ったスタイルで実施することにしたそうです。

ナースカフェができるまで

性教育は人権教育でもあり、生きる力をつけることが出来るとも言われているそうです。新山さんは看護師として思春期の子どもたちに性教育を教えることに関心を持つようになったそうです。

その中で、学校の中には、しんどさを抱え隠しながら生きている子どもたちがいることなどから、学校の中に入り込みたいと考えるようになり、となりカフェにスタッフとして関わるようになり、田中さんにナースカフェを提案したそうです。

そこで、大阪コミュニティ財団の助成金に応募。申請が通り、今年度は4回実施。今回のイベントは、その4回の振り返りでもあるとのことでした。

ナースカフェの振り返り

第1回 「ダイエット」

第1回目は、参加しやすいテーマとして「ダイエット」にしたそうです。ダイエットは、思春期に関わってくるテーマであり、摂食障害等の問題にもつながるとのこと。

カフェでの話し合いは、ダイエットのメリット・デメリットについてどう思うかなどの対話から、正しいダイエットの方法についてなど。たとえば、夕飯を夜遅くに食べざるを得ない生徒や、家族と一緒に食べないといけないため遅くなってしまう生徒などには、早めに少しお米を食べておくとか、少し翌朝にまわすとか、自分の家の中でできる調整について話しあったそうです。無理なく、自分の生活の中で出来ることを一緒に考えるというのも、サードプレイスならではだと思いました。

第2回 「フリートーク

第2回は、生徒が語りたいことをテーマにしたいという思いから敢えてフリートークにしたそうですが、自然と性の話になったそうです。

性感染症の広がりを体験できる「水の交換」をしたら会話が増えてきて、「避妊具の必要性ってあるの?いらないんじゃない?」という意見もでてきたと。避妊の仕方などは知りたかったら個別で聞いてくれたら教えるよと伝えていて、実際教えることもあるそうです。

後日、避妊具が欲しいと言ってきた生徒もいて、自分から必要だと考えるようになってくれたことに嬉しいと思ったそうです。自分で気づきを得られるということが、サードプレイスでやる意義の一つだと思いました。

第3回 「コミュニケーション」

第3回は、友達関係とか人とのコミュニケーションで困っているという生徒のための「コミュニケーション」。コミュニケーションの中では、今問題になっているデートDV、グルーミングや、バウンダリー(人と人との境界線)についても盛り込んだそうです。

デートDVについては、加害者・被害者になりやすいタイプについて話し合い、自分はどちらのタイプかとか、前の恋人はどちらのタイプだったとか、自分の体験話もでてくるようになったと。インターネット社会でネットで繋がるのはよいこともあるけれど、グルーミングなどをしてくる人もいるから気を付けなくてはいけないということを伝えるそうです。

※グルーミング(子どもに対して優しい言葉で語りかけて、しっかり関係性をつくったうえで、性的な方向にもっていく。年上の人が子どもを狙うケースが多い。関係性ができているからほだされてしまい、断ると悪いかなという空気にもっていく。それが少しづつエスカレートして、がんじがらめになっていくケースもある。性暴力にもつながる問題)

第4回 「多様性」

第4回のテーマは多様性。自分の性や性的志向に悩んでいる人のためということと、生徒たちは多様性という言葉は知らないけれど、LGBTQという言葉は知っているので、LGBTQを切口に多様性について話し合ったそうです。

たとえば、わかりやすい日常の例を出しながら(ヒールはいている人のイメージ、作業着を来ている人のイメージ)、平易な言葉で固定観念を変えていくのだそうです。世の中多様性にあふれているから、性も多様性があふれているんだよねとなると、確かにわかりやすいですね。

ナースカフェがサードプレイス内にある意義

親・教員以外の第三者に相談できる

学校の授業との大きな違いは「サードプレイス」の中にあるということだと思います。新山さんは、サードプレイスならではのことをしたいと考え、気軽に話せる第三者の大人というスタンスを崩さないという方針を徹底されているそうです。医学知識を生徒に伝えるような形式だと、サードプレイスの中で授業が生まれるということになってしまうんですよね。気軽に話せる第三者の大人というスタンスを崩さないというのが、生徒たちにとって、よい影響を与えているのだと思いました。

いつも立ち寄るカフェで"ついで"に聞ける

生徒たちも「ナースカフェ」というネーミングで、新山さんがofficeドーナツトークのスタッフでありながら本職は看護師であるということに気づくそうで、そこで意外に質問が多かったのが、病院の行き方・病院のシステムについてだったそうです。

確かに、思春期の子どもたちが病院に行きたいと思ったとき、「どこにいけばいいのか」「病院のシステムってどうなっているのか」を身近に聞ける人って、少ないですよね。保険証もいるし、病院に行くまでのハードルって結構高い。先生とも普通の会話はするけれど、病院の行き方を教えてとは言いにくい。ナースカフェで、リラックスした雰囲気で雑談しながら、来たついでに信頼している専門家に聞ける、このついで感(手軽さ)がとても大事なのだと思いました。

カラダの悩みを相談できる専門家と出逢える

思春期の子どもにとって、体のことは勿論、心も含めて専門家へ相談のニーズがあるのだと思いました。病院の受診の仕方から、発達の特性(発達障害)について悩んでいる子、親への相談の仕方など、相談内容も幅広いそうです。でも、とてもデリケートな話なので、信頼関係がないと保健室の先生に突然聞くというのも難しいと感じます。また個室だと、より相談のハードルが高くなってしまう気がします。

 

全国の校内居場所カフェに、カフェのスタッフとして、ソーシャルワーカースクールカウンセラーがいることはあるでしょうが、看護師さんがいるというのは先進的な取り組みだと思いました。

冒頭、新山さんが「性教育は人権教育」とおっしゃっていたとおり、全4回のテーマに共通しているのは、人権だと思いました。新たな気づきでした。

来年度も予算を確保されているとのことなので、また報告会をお聞きしたいとおもいます!