傍楽 - Kaori's Blog

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会事業家・活動家から感じたことを綴っていきます。

ネットを介した若年層の性の搾取〜ライトハウス活動報告会より〜

目次

 

ネットを介した若年層の性被害

10日にNPO法人ライトハウス | 人身取引被害者サポートセンターの活動報告会へ行ってきました。人身取引というと奴隷などをイメージされるかもしれませんが、ライトハウスが支援対象としているのは、人身取引の中でも性的搾取、具体的には、SNSでの自撮り被害(SNSで親しい関係になり自分の写真を送らせ脅迫など)やAV出演強要(遠隔地や個室につれていかれ撮影するまで帰さないと脅迫)をされたという被害経験のある方などです。そして、最も問題なのは10代の子どもからの相談が急増しているということでした。親にも先生にも言えず、一人で抱え、どんどん追い込まれていく子どもたちがこんなにもいること、さらにはそれを防ぐ有効な方法が無いことがとても深刻だと思います。

オンラインアウトリーチという手法

2018年度の相談件数は241件で、一番多い相談はAV出演強要だったそうです。ところが、今年度オンラインアウトリーチを始めたことにより、自撮り被害、性的画像被害、援助交際など若年層からの相談が急激に増え、既に相談件数が昨年度の2.5倍になっているとのことでした。

オンラインアウトリーチとは、GoogleやTwitter広告を利用したもので、性被害などに関連するキーワード検索をすると、ライトハウスの相談先(LINE)が表示されるというものです。これにより、10代の若年層からの性被害の相談が急増していて、既に昨年度2.5倍となっているそうです。おそらく、広告表示回数やクリック率なども把握されていると思うので、改善もされていって、もっと相談者が増えてくるのではないかと推測します。リスティング広告も、営利目的だけじゃなく社会課題解決にもっと活用されてほしいです。

若年層の場合、相談の入口はLINEがほとんどで、その後の相談もLINEで継続することが多く、状況によって電話になったり、面談を入れたりするようです。

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足りないものは何か

今の状況を改善するために足りないものとして、以下3点が挙げられました。

  1. 法整備
  2. 相談体制
  3. 性教育と人権教育

 まずは、人身取引に関連する「法整備」。あまり知られていませんが、日本は人身取引対策については海外から大きく批判されています。

海外との比較で、以下のアメリカの事件が紹介されました。会社運営者が女性22人にAV出演を強要し1400億円の賠償金を支払うことになったという話です(州によっては人身取引は終身刑のところもあるとか) 

gizmodo.com

手口は日本のAV出演強要とそっくりのようですが、この賠償金の金額が、アメリカにおいてこの問題の深刻さをあらわしているかと思います。一方、日本ではまだこのような裁判すら起こっていないという差があります。賠償金1400億円、自己破産しても債務は残り終身刑の可能性もあるとなったら?日本の状況も変わるのではないでしょうか。(罪を重くすればいいということではなく、日本の状況がひどすぎると)

 2番目の「相談体制」については、ライトハウスは様々な関係者とチームを組んでいらっしゃいますが、まだまだ協力者が足りていないようです。企業や企業で働く人ができることって何だろうかと考えます。

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ボランティアで出来るサイバーパトロールも、この問題にかなり密接にリンクしています。(10代のネットを介した性被害・性搾取という社会問題という点において)
www.police.pref.miyagi.jp

サイバーパトロールは被害を未然に防ぐための予防活動と言えると思います。一方ライトハウスは、SOSをあげられない被害にあった方にネットを活用したアウトリーチ活動をおこない、専門家を巻き込んだ支援をされています。

社会問題は1つのセクターでは解決できなく、様々な関係団体が連携して動く必要があると改めて感じました。

 3番目の「性教育と人権教育」は、被害者にならないためにも、あるいは加害者にならないためにも必要だと思いました。そして、日本の教育は本当に全く足りていないように思います。性的搾取・性被害は、身体的虐待や貧困よりも、さらに周囲から見えにくい被害だと思います。子どもたちは自分が悪いと思い込まされているケースも多いので、親や先生など自分を怒る可能性がある人にはなかなか言えないと思います。

また、状況によっては、やっと打ち明けようと思っても大人が忙しそうにしていて言い出せなかったり、やっとの思いで打ち明けても怒られてしまったりすると、二度と相談しなくなってしまう、そんな子どももいるのではないかというご指摘は本当にそうだと思いました。

 支援者の方がおっしゃっていましたが、大人は自分に時間があるときなど、自分の都合で子どもの話を聞く傾向にあると。そうではなく、子どもが何か言いたそうにしていないか、と子どもに合わせてあげて欲しいとおっしゃっていました。

最後に、実際に子どもが被害に遭いライトハウスにつながるまでの事例を聞かせていただきましたが、手口がとても巧妙かつ悪質で、10代の子には怪しいと判断するには難しいとおもいました。まさに性の搾取という人身取引は「人間から生きていく力を奪っていく」行為であり、それが若年層に広がっているという事実に向き合い、上記3点の取り組みが急務だと強く思いました。