国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)トップを務めるフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官の講演会「難民の国際保護と私たちにできること~教育の役割~」が、19日(日)上智大学にて開催されました。
■難民支援における教育分野の重要性について
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は講演の中で、難民支援には医療や住居などの支援と同様に「教育支援」が必要であると訴えました。
その背景には、難民の中には18歳未満の若者が多く、そのうち5割以上が学校に通うことが出来ていなく、教育が長期間に渡り受けらていないという現状があるそうです。ちなみに、大学まで進学できるのは、わずか1%(世界平均は36%)とのこと。
彼らは、ひどい経験(家族離散、強制徴兵、労働搾取、児童婚)を経験して、難民として来ています。逃れてきた国で学校に通うというのは、教育を受けられるというだけでなく「普通の生活が送れるという感覚を子どもたちが持てる」という意味でも重要であると説明し、「教育」の反対にあるものは、「テロ」「犯罪(加害者・被害者)」であると指摘しました。
■誰一人取り残さない世界を実現するために
グランディ氏は、SDGs【Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標】は、誰一人取り残さない世界を実現することを目標としており、ここには、難民における「教育支援」も重要な役割があると訴えました。
グランディ氏は、
難民というと「難民キャンプ(強制移動)」を想像する人が多いが、難民キャンプは、いずれケアがされなくなり、難民を孤立させ、それが「怒り」につながるため良いモデルではないと説明し、難民への教育支援を国家の発展計画に含めていき、国家制度にアクセスさせる仕組みが必要である
と話しました。また、
難民が発展途上国に逃れるケースも多く、その中で、才能がある人やハイリスク層は、先進国へつなぐことも必要ではないか
との見解を示しました。
■UNHCR難民高等教育プログラム 卒業生によるディスカッション
後半は、UNHCR難民高等教育プログラム(*)卒業生3名によるディスカッションでした。
本プログラムは、日本に住む日本国籍を持もたない難民が、奨学金を受けながら日本の4年制大学で就学できるようにサポートするための奨学金制度です。
登壇者は、関西学院大学卒のチャン氏(ベトナム)、明治大学卒のジャファル氏(ミャンマー、難民2世)、関西学院大学卒のシャンカイ氏(アフガニスタン)。
卒業後の進路は、チャン氏は通訳の会社を起業、ジャファル氏はIT企業に就職、シャンカイ氏は東大の大学院に進学されているそうで、3名は本プログラムが自分たちの人生に希望を与えたということや、一方、日本人は難民についての正しい情報を知らない人が多く、もっと難民のことを知って欲しいと訴えました。
*国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所と、UNHCRの活動を支える公式支援窓口である、特定非営利活動法人国連UNHCR協会が運営。パートナー大学は、関西学院大学、青山学院大学、明治大学、津田塾大学、創価大学、上智大学、明治学院大学、聖心女子大学の8校。