他者に厳しい社会。弱者が弱者を叩く社会。これは、弱い社会の象徴である。まさに「分断社会」。しかし、彼らはなぜ叩くのか。それには、きっと理由がある。
先日の放送大学で聴いた神戸大学大学院の西澤 晃彦教授による「貧困と社会:貧困という体験~貧者のアイデンティティ~」にて、以下のような説明があった。
この弱者が弱者を叩く社会背景には、社会があまりにも「経済的自立」にこだわり、依存を敵視するようになったことが要因のひとつにあり、これにより、「貧」に対する社会の見方が変わってきたようだ。
●貧困の忘却~「豊かな社会」の陥穽(かんせい)~
総貧困状態としての敗戦直後から、「総中流の神話」へ。その過程を通じ、貧困は積極的に忘却され無意識へと沈められていった。
●貧困の犯罪化~新自由主義の刻印~
経済的に自立できないことが、能力の欠如と怠惰だと結び付けられるようになった。そして、皮肉なことに、貧者ほど、それを「なめらかに」受け入れる。そして、それが自分自身の強い自己否定となり、結果自分自身を排除するようになる。だから、生活保護などの社会保障制度を利用したがらない。「自身の排除」は福祉から遠ざけるのだ。これは、ホームレス問題とも深く関わっている。
そのような状況の中で、なんとか自分のアイデンティティ・自尊心を保とうとするための行為が、「他者の依存への批判」だという。
自分より劣っている「あいつら」を常に探し、劣っている「あいつら」の依存を批判することで、自分を保つ。「あいつら」がいなくては自己を見失う、「あいつら」なしでは、自分のアイデンティティが維持できないのだ。
つまり
貧困体験によって、関係性とアイデンティティが確立できないことが、貧困体験の中核的要素と言える
と西澤教授は指摘する。
このシリーズは全部聴講したかった。おもしろかったです。
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