傍楽:来栖香のブログ

「働く」とは「傍(近くにいる人)」が「楽(らく)」になること。日々の仕事を通じて社会に貢献する、社会起業家の働き方や生き方を研究中。このブログでは、社会課題をビジネスの力で解決するソーシャル・ビジネス、非営利組織の経営、CSRなどについての気づきを共有していきたいと思います。

困難を抱えた若者のサードプレイス~西成高校にモーニングカフェがある意味~

今月7日は、大阪の一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英さんが地元立川で講演されるとのことで、職場からダッシュで駆け付けました。主催は立川青年会議所で、テーマは「大人も子供も繋がる場所~サードプレイスについて考えよう~」です。

※officeドーナツトークの田中さん

 

子どもにとってのサードプレイスとは

ファーストプレイス「家庭」
セカンドプレイス「職場(大人)」「授業(子ども)」
サードプレイス「自宅や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所」

サードプレイスとは、子どもにとっても、大人ににとっても「自分らしさを取り戻せる場所」のことを指します。

大人のサードプレイスについては良く議論されていますが、子ども、特に中高生など多感な年齢の若者のサードプレイスについての議論や実践報告についてまだまだ少ないのではないかと思います。

 

 officeドーナツトーク運営「となりカフェ」やNPO法人パノラマ運営「ぴっかりカフェ」などの高校内居場所カフェは、困難を抱えた高校生のためのサードプレイスになっています。

田中さんが2012年に始めた大阪府立西成高校での「となりカフェ」が日本で初めての取り組みで、そこから全国に広がっており、今では、大阪10校、神奈川9校、宮城、北海道にも広がっているそうです。 

 

<こちらは、これまで私が訪問した高校内居場所カフェ>

blog.canpan.info

 

blog.canpan.info

 

これまでの高校内居場所カフェは放課後や休憩時間の開催でしたが、西成高校では、これまでの「となりカフェ」に加え、授業一限目が始まる前に立ち寄れる「モーニングとなりカフェ」を始めたそうです。

 

大阪府立西成高校って、どんな高校?

「モーニングとなりカフェ」の前に、2012年に西成高校で「となりカフェ」を始めることになった経緯ですが、西成高校は担任の先生が二人も配置されており、それだけ困難を抱えた学生(貧困家庭・非行・不登校・障害(発達障害含む))が多い学校です。

さらに、今困難を抱えていなくても、その予備軍となる層がある程度いて、その予防支援として外部のリソース(officeドーナツトーク)に高校が頼ったという経緯があるということでした。子どもたちが本当に困った状態に陥る前に支援に繋げたい。でも、学校のリソースだけでは出来ないから外部と連携する、というのは外部を学校内に入れることを嫌がる傾向にある学校側の取り組みとしては画期的だと思いました。

「子どもの貧困問題は先生だけでは解決できない。大人の貧困によって、最も弱い立場である子ども・若者が皺寄せを受けている。居場所(ファースト、セカンドプレイス)を失った若者のために、高校内居場所カフェ(サードプレイス)を始めた」(田中さん)

 

 「モーニングとなりカフェ」を始めた理由

西成高校内にある「モーニングとなりカフェ」は、7:45にオープンし、コーヒーやトーストを無料で提供しています。スタッフが近所の商店街で焼きたてパンを購入し、コーヒーもインスタントではなく、挽きたてのコーヒー豆からおいしいコーヒーを入れます。BGMも朝らしいさわやかな曲を流すそうです。

faavo.jp

モーニングとなりカフェの初日には、17名も学生が来たそうです。

私は、高校生が朝ご飯を食べないということ自体は珍しくないであろうし、朝ぎりぎりに起きたい高校生にとって、無料だからといって、そんなニーズは本当にあるのだろうか?と思いましたが、田中さんのお話をお聞きして、モーニングカフェの本当の意義がわかりました。

 

西成高校に通う子どもは大変なバックボーン(貧困、虐待、軽度の障害など)を背負っていることが多く、 朝ごはんやお弁当をつくってもらえないこともよくあるそうです。夕飯ですら食べられないこともある状況で、だからといって、親がお金をくれるわけでもな く、結果的に「自分たちで何とかしろ」となるケースが少なくないといいます。

 

田中さんのお話によると、経済的下流層のシングルマザーは18~19才で母親になることも珍しくなく、子どもが高校生になっても30代後半という若さに加え、自身も貧困・虐待の被害者であったりすることから、彼女たちも自分自身の孤独に悩んでおり、そのため、自分の孤独を埋めることが優先され、恋人などに会うために子どもの食事も用意せずを遊びにいってしまうこ とがあるそうです。

 

おそらく、母親も子どもへの愛情ないから食事を用意しないのではないと思います。でも、子どもには「食事はなんとかしてね」と言って遊びにいってしまったりする。田中さんは「やんわりした虐待」(経済的虐待、ネグレクト)と表現されていましたが、虐待というよりかは、その無責任さが生まれる背景が問題に思えました。やんわりした虐待をなくすには親への支援が必要だと思いますが、それを待っている時間はなく、となりカフェのように社会がサポートする必要があるのだろうと思います。

 

彼女らはその孤独を埋めるため、再婚を繰り返し、そのため、子どもたちの父親がそれぞれ違う、ということ もあるそうです。

モーニングとなりカフェに来る高校生の中には、幼い義理のきょうだいがいて、自分はご飯を我慢して妹弟にあげて学校にくる子もいるそうです。

(親の無責任さへの)悔しさ、でも親のことを愛しているという感情、空腹、孤独感、幼いきょうだいへの思いなど、いろいろな感情のうずまきをもって一晩を過ごし、朝を迎えている(田中さん)

このもやもやした気持ちをもったまま授業に出たくないという気持ちを、カフェで解消している。モーニングとなりカフェには、そんなもやもやをぶつけても聞いてくれる大人がいる。学生たちは空腹にも関わらず、カフェではぎりぎりまでスタッフとしゃべって、授業開始数分前にトーストを急いで食べて授業に向かうといいます。このような大人をハイティーンは求めていると。

''朝からぼんやりコーヒーを飲むその姿を見ていると、教室という「セカンドプレイス」に臨む前のひと時 を過ごす時間が、生徒さんたちには必要なのだと僕は実感した''(田中さん)

 

「子ども食堂」に真の貧困当事者は来ない
ここ数年話題の子どものサードプレイス「子ども食堂」ですが、ここには真の貧困当事者は来ない、と田中さんは主張します。個人的にも、子ども食堂は「アクセスの悪さ(精神的・物理的)」が課題かと思います。

 

第一に、そもそも真の貧困当事者は子ども食堂の存在すら知らないそうです。(存在は知っていても、自分たちとは関係ないと思っている)。

第二に、子ども食堂は公民館などの公の場で運営されていることが多い ですが、彼らはフォーマルな場で運営されるサードプレイスには出てこないと言います。大事なのは、フォーマルな場「セカンドプレイス(授業のある教室)」の近くにサードプレイスをつくることだ指摘されていました。

 

5000万人が経済的下流層となり、7人に1人の子どもが貧困家庭にある中で、NPOが真の貧困当事者にアプローチできなくなってきていて、NPOは今迷走しているというお話がありました。この20年間、NPOは社会課題解決の主な担い手として牽引してきましたが、今起きているNPOの迷走は10年は続くのではないかとのお話がありました。

これからは、ノブレス・オブリージュ(もっているものが、できる範囲で貢献する)など、堂々と学校に入っていけるフォーマル伝統的組織(青年会議所含め)が活躍する時代ではないだろうかという見解のようです。私は、それでも、NPOに期待してますが。 

 

 感想
「ひとり(孤独)が良い」というのは満たされて初めて感じられることだと感じた。
田中氏の「サードプレイスはポジティブな孤独を提供する空間」「自分を整えるための時空」というのも納得する。

今回のような経済的下流層のシングルマザーの話があると、母親の行動に非難があつまるが、田中さんが話していたように、彼女らも被害者でありサポートやサードプレイスを必要としている。しかしながら、その皺寄せが子どもたちに行ってしまっている現状は一刻もはやく解決しないといけないわけで、そのためには、NPOや伝統的組織(ノブレス・オブリージュ)と地域社会の連携が必要なのだと思う。

 

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 ※青年会議所の方とofficeドーナツトーク田中さんの記念写真